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2006年02月20日
■THINKING ABOUT BARRIER 【3】
『心温まる近所のおばさんの行為』
障害を持つ私がちょっと、ほんのちょっと不便なんだ、という事が構えることなく自然に判って貰える女性に出会った。年の頃は私と大差ないおばさんだった。
週末を迎える直前の我が家のゴミの扱いには特別、気を遣う。金曜日の夕方はゴミ置き場が大変賑やかになるのである。「あっ、忘れた!」分別ゴミ箱から二つの袋を取り出した私は娘の帰宅時間を考えて投棄最終時刻の9時までに間に合わせるようにせめて玄関脇の車椅子の上に載せて置こう、そう思って片手で二つの袋を持ち、右足を引きずってドアを開けた。
一人のおばさんがゴミ投棄室の方から歩いてきた。年配の割にはとても軽やかな足取りだった。「こんばんは!」おばさんはちょっと会釈しながら通り過ぎようとした。「こんばんは!」袋を持つ手でドアのハンドルにつかまりながら挨拶する私に気付いたかのようにおばさんは振り向いてバックしてきた。
「手伝いましょうか?」
「結構です。大丈夫です」
「そうですか? ゴミなら棄ててきますよ」
「ありがとうございます。もう、家の者が帰ってくる筈ですから、せめてここに載せて置こうと思って」
「そうですか? 棄ててきますよ」
「ええ、でも、折角、ご自身は終えてお帰りになるところですから・・・」
「いいんですよ、そんな事。棄ててきましょう。どっちがどっち?」
私の家のゴミを棄て終わったらしく、おばさんは戻る途中、ドア越しに言った。
「ゴミの日の夕方には奥さんの車椅子に袋を置いておきなさいな。○が燃えるゴミでXが燃えないゴミって書いて置いてくれればいいですよ」
「ありがとうございます」
寒い季節に心温まる女性に出会った私が幸せな気分になったのは言うまでも無い。
私が幼かった頃、近所には雷親父風なおじさんもいたが、心から親切なおばさんもいた。私が育った東京も「とんとんとんからりんと隣組・・・」と鼻歌混じりに回覧板を回して歩くような町があちこちにあった。親切なおばさんにはお節介という言葉は似合わなかった。やっぱり例えお節介でも一利あっても害無しで教訓がいつも見え隠れしていたものである。要らぬ世話と言われずに心から礼を言いたくなるようなやり取りが障害者や高齢者の間に浸透していけば改まってノーマライゼーションを掲げる必要もないだろう。
司馬遼太郎原作『功名が辻』が今年のNHK大河ドラマだそうだ。かの山内一豊の妻を再認識するいい機会だと思っているのは私だけだろうか。
(阪田久美子)
阪田さんのBlog「脳のミステリー」http://blog.goo.ne.jp/ban-kuko/
投稿者 bfc : 2006年02月20日 12:43