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2006年11月29日

■Thinking About Barrier【12】

『虐め自殺の予告という異常世相』

阪田久美子

 自殺を予告する手紙が届いている事で、文部科学省は11月11日、担当する児童生徒課の職員が24時間の警戒態勢を取ったと報道している。予告通りの行動は今のところない。
 予告自殺という最近の風潮には、何とも言葉がない。理由は本人に聞かなければ分からないが、本人すら分かっていないような気がする事がある。
 文明の発達に伴って色々な問題が起き上がるのは近代社会の悩みでもある。携帯電話を伴って登下校する子供達は世界広しと言えども日本だけだろうと思う。誘拐など、初めは子供の安全の為に持たせたのかも知れないが、それが子供を徐々に脅かして来ている事に気付くべきだと思う。情報社会は子供達の社会にも蔓延っているのが現状だが、溢れる情報に疎い子は仲間外れになるのかも知れない。情報はそれ程大切なのだろうか。情報が独り歩きして、大脳に入り込むと安心と不安が入り混じって飛び交う事がある。

 先日、私の車椅子の前を小学生が一人で歩いていた。私は彼女の後をゆっくり進んだ。あまりにノロいので、私は右に左に上半身を動かしながら彼女の様子を探った。彼女は一心不乱に携帯でメールを打っていた。軽くクラクションを鳴らしたが、一向に気付かない。遠慮がちに「すみません!」と声をかけたが、振り向きもしない。思い余った私は「すみませんが通してください!」と少し声を荒立てて言った。彼女は、避ける事もせず、ただ、振り返った。活気のない顔は可愛げもなかった。無言で彼女は少し道をあけた。私の「ありがとう」という言葉は決して彼女の脳には届いていない。少し前は、子供達が部屋に引き篭って自分だけの世界に入り込んで問題にしたものだ。外を歩きながら自分だけの世界に入り込む現代社会の怖さを私は目の前にして唖然とした。小さな画面を通して伝えられる情報はいいものばかりではない。悪い情報も一杯入ってくる。そして、得てして悪い情報は人の興味心をくすぐるのである。正しい判断力が備わってから便利な携帯を所持して、初めて効力を発揮するというものである。
 心から「死にたい」と思って死ぬ人はいない筈だ。だが、勿論「死んでしまいたい」と思う人はいるかも知れない。九死に一生を得て、甦った今の私にしてみれば、自ら命を絶つなど信じられない。だが、確かにじっくり考えればこれも自己中心の考え方かも知れない。
 自分を振り返ってみれば、僅かな可能性が常日頃から伸ばしたいと秘かに思っていたアビリティに少しでも拘わりがあったからこそ、自ら叱咤激励を強いる事が出来たのである。身近にいる姉に置き換えて考えると、確かに「お先、真っ暗!」になってしまっただろう。彼女は20代の頃から手仕事一筋の人間だ。毎日、漆と共に生きている。その漆を自らが形創りした木地に自らの手で塗る。木と漆と喜怒哀楽を一緒に感じながらの人生で、姉になくてはならないものは両手である。だから、万が一、倒れて右麻痺を受容せざるを得なくなったのが、姉だったら、と想像するとゾッとする。そして、私はいつも思っている。「私でよかった!」と・・・
 無を皆無とか絶無とは考えずに、ゼロと考えればいいのかも知れない。ゼロは加えても引いても元の数を変えないし、掛けるとゼロになる、という不思議な数である。ゼロからのスタートとは言っても、ゼロでエンドとは言い難い。

阪田久美子

阪田さんのBlog「脳のミステリー」http://blog.goo.ne.jp/ban-kuko/

投稿者 bfc : 2006年11月29日 14:43