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2007年06月11日

■Thinking About Barrier【18】

『豪州人とのバリアフリー仕事』

阪田久美子

 40年以上前の豪州人と私の間に立ちはだかったのは「言葉」という私側の一方的なバリアだった。東京オリンピックの年と言えば、日本では何もかもが未だ発展途上にあった。
 勇敢にも、若かった私は単身豪州に乗り込んだのである。ただ有難い事に、10代の単身留学が珍しいという事で送り込む日本の学校側も受け入れる豪州もかなり興味深く見守ってくれていた。半世紀近い月日を確かに身も心も豪州から離れる事なく私が過ごして来た事は否定できない。

 さて、今回のバリアは「撮影」と「漆」と私の身に付いた障害というバリアだった。確かに漆塗師は言葉のバリアが最大の悩みだったと推測できる。大掛かりな撮影は初めての体験になる塗師と私をよそに、撮影隊の三人には何とも不可解な日本古来の漆というものと私の電動車椅子がバリアになる筈だった。幸い障害を抱え込んでいる私にとっては言葉も漆も障害にはならなかった。何しろ、私自身も20数年前から豪州の国立NGV美術館専属の執筆活動と陰の企画をやっているのだから・・・それに言語障害もなく、更に車椅子は優に5年は自ら乗り回している。
 この時期、珍しいほど晴れ上がり、気温はどんどん上昇して太陽はあくまでも輝き、風もそよ風程度で一日の仕事は午前9時に始まった。
 港区内の由緒ある浄土宗寺の境内で動き回る私達5人はあちこちで出遭う凸凹道に妙に感心し、出遭う段差を面倒にも思わずに大きな三人の男性が軽々と持ち上げてくれた。私が無事に平らな場所に陣取ると、今度は塗師と三人の男性の間に生じるバリアを私が払い除けてあげる番が来るのだった。工房内での仕事、寺院内でのインタビュー、境内裏手の瀟洒な池をバックに日本伝統の創作漆器と次々に撮影が順調に進んで一日の仕事が終了した。
阪田久美子

阪田さんのBlog「脳のミステリー」http://blog.goo.ne.jp/ban-kuko/

投稿者 bfc : 2007年06月11日 11:13