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2007年12月13日

■Thinking About Barrier~【24】

『今年も師走が・・・』

阪田久美子

 BFCのブログを担当して早くも2年が経過しようとしている。
 常にバリアフリーを掲げ、ノーマライゼーションを念頭に置いて、自分らしく綴りながら、今年もあくせく一進一退、一年を無事に過ごしてきて、チョッと振り返ってみると師走は四季が果てるとか年が果てるという意味もあるようだが、私は「一年の最後になし終える」という事で、師匠の僧侶が一年最後のお経をあげる為に、東西南北を馳せるという事から「師馳す」という意味が深く関わっているだろうと理解する。

 今年最後の仕事に取り掛かっている私は東京上野で開催中の「大徳川展」に足、否、車椅子を運んだ。展覧会場になった平成館には、徳川将軍家であった尾張、紀伊、水戸の御三家に加えて、久能山・日光・紀州の東照宮、そして更には上野寛永寺や芝増上寺など徳川家縁の地に伝えられた宝物が処狭しと集められていた。徳川家の時代は、美術展という観点から「将軍の威光」「格式の美」「姫君のみやび」の三部構成で見事に紹介されていた。
 明治は遠くになりにけり! 江戸は更に遠退いて・・・ だが、その文化や伝統は現代に実に深く根付いているという事実を改めて考える自分自身に、至極、幸せを感じたのである。更に、今尚、豪州の美術館に関与する事によって、絶えず、日本の伝統美に触れるチャンスを得る事は自らに感謝している訳であると実感した。
 いっ時に、ひとつの場所で、一挙に「いにしえ」と「トゥデイ」の狭間に身を置いた私の脳裏には早くもレポートの構想が浮かび、逸るハイパーグラフィアを自分の海馬に委ね、車椅子の障害者になって目の前の問題点に目をやってみる事にした。
 上野の平成館では早朝にも拘らず、長蛇の列には「待ち時間60分から70分」に変わったばかりの但し書きが目に入った。入り口で係官に声をかけられた私はチョッと戸惑った。「こちらからどうぞ!」の声に人々の視線が一斉にこちらを向いた。私は平然とした態度で「ありがとう!」と会釈して、係官の誘導に従った。これって不公平かな? これって障害を武器にしているかな? これってある種特権の横暴になるのかな? 会場に入って、そんな心配は吹っ飛んでしまった! 因みに、あんな時、私は敢えて堂々と振舞う事にしている。その方が寧ろ問題を引き起こさない。殆どの鑑賞者が車椅子の存在には全く気づいていない。気遣いもない。まして、そこでのノーマラゼーションが間違っている。バリアフリーという言葉は一生懸命、その活躍を披露しようとしているのに、会場の係官が控え目に「車椅子にお気をつけ下さい!」と注意をかけてくれても、人々は無視、はたまた迷惑顔を私に向ける。自ら気づいて、ギョッとしてハッとして「どうぞ!」と言葉をかけてくれる人に会うと宝物を見つけたような気持ちに私はなった。仕事柄、美術館は慣れている私だが、全く普通の人だったら・・・と考えてしまうほどの「日本人のノーマライゼーションの意識の無さ」が鮨詰め状態の会場にはあった。
 帰りのJR上野駅では介助係なる名札を付けた駅員が車椅子の私を誘導してくれた。その駅員は私が恐縮してしまうほど駅構内を歩く人々に「ゴメンなさい、車椅子が通りま~す」と言いながら歩みを進めた。エレベーターでほぼ同時に立ち止まった女性に「すみませんね、車椅子に譲って下さい!」と平然と言った。小さなトランクを引く女性は「失礼じゃないですか?」と言い返した。「先に入れてくれたら、隙間に入れますよ、どうぞ!」という駅員に女性は「横暴じゃありません?」と反論した。「早くして下さい。それくらいの荷物なら、エスカレーターをご利用下さい。閉めますよ~」の声に女性は憮然とドアから離れた。逸早くエレベーターから出た私の横に、階段を利用してきたらしい女性を見た。彼女は私と同じ電車に車両を隣同士にして乗った。幸いと言うべきだろうか、彼女は私より一駅手前で下車した。超一流のブランドトランクを引っ張る女性の脳裏には何が残っていただろう。こんな時、往々にして日本人は「知らん顔」を装うものである。そして彼女の頭には「気まずさ」と「不愉快さ」がキッと僅かな時間でも残るだろう。
もし彼女が同じ車両に乗ってきていたら、恐らく私は「先ほどはどうも・・・ ありがとう」と言ったに違いない。そんな時私は恐らく「いいえ、どういたしまして、こちらこそ気が付かないで・・・」の言葉を貰って両者、ひと時の珍事に拘わる時間は、ほんのいっ時だと思うに違いない。そして恐らく二人の間には「和み」が残るだろうと想像する。
 2年前から、姿勢を正して「バリアフリー」と「ノーマライゼーション」を念頭に毎月のようにBFCのブログに綴ってきたが、読んだ人に共感を覚えていただけただろうか、それとも違
った感想を持って貰えただろうか? 私にしてみれば、どちらも歓迎する。
 今年はイノシシのように突進してきたが、子年の来年もチュウちょ(躊躇)せず羽ばたいていこうではないか!


阪田久美子

阪田さんのBlog「脳のミステリー」http://blog.goo.ne.jp/ban-kuko/

投稿者 bfc : 15:29