2006年02月06日
■シネマレビュー#03~Ray
Rayは、ゴスペル・ジャズ・カントリー・R&Bを融合しソウルミュージックを確立した天才アーティスト、レイ・チャールスの半生を描く伝記的音楽映画だ。主演は「コラテラル」でもタクシー運転手役で、いい味を出していたジェイミー・フォックス。貧しいけれど、誇り高い母親に育てられたRayは、7才の時、緑内障で視力を失う。母は、たとえ、目が見えなくても、自立する事、施しは受けるなと、厳しく躾ける。長じてRayは、耳を目の代わりに、音楽的才能を活かして自立する。当初は、食べるためにナット・キングコールなどの真似をしていたが、やがてゴスペルとR&Bを融合させ、ソウルミュージックを確立し、しだいに、ビックアーティストに登りつめて行く。名曲GEORGIA ON MY MINDやI CAN’T STOP LOVING YOUなどのヒット曲を次々に発表する。僕は、ほぼ、同時代に彼の曲を聴いているので、とても壊しい。その間、弟を事故で死なせた責任のトラウマにより、麻薬に溺れる話しや、私生活、業界の裏話しも挿入される。映画は、GEORGIA ON MY MINDがジョージア州の州歌に制定された所で終わるが、あらためて感じるのは、この天才アーティストの、たとえ、Disabilityであっても、努力と才能と勇気、家族友人の支えによって、音楽を通じて世界的な自己実現を達成したという人間ドラマだ。最近作のダイアナ・クラールとの共演アルバムもいい。(tad)
2005年07月10日
■シネマレビュー#02~ミスティック・リバー
「ミスティック・リバー」
エスタブリッシュではない、プア・アメリカンの深い苦悩と哀しみを描く「ミスティック・リバー」 映画「ミスティック・リバー」は、デニス・レヘイン著の同名の原作をクリント・イーストウッドが映画化。著者のデニス・レヘインは、大学在学中に「スコッチに涙を託して」でシェイマス賞最優秀処女長編賞を受け、現在は「パトリック&アンジー」という人気のシリーズものを発表している、期待される若手作家のひとりだ。「ミスティク・リバー」は暖めててきたプロットを書いた、初めてのノンシリーズという事だ。
舞台はボストン。この街も大学都市の顔とは裏腹に、ドラッグと暴力そして青少年への牲犯罪のうずまく街だ。ロケ地もボストンが使われている。
ある日、幼なじみのジミーとデイブとショーンは、いつものように、家の前の道路でホッケー遊びをしていたが、ボールが排水口に入ってしまい、しかたなく3人はまだ乾いていない鋪装に名前を書いて遊ぶ。その時、車が近づいていてきて男が降り立つ。警官のバッヂはつけているが、私服だ。三人の行為を咎め、車に乗れという。三人のうち、デイブだけ が乗り込む。すべてはこれが始まりだった。デイブは、そのまま4日間も穴蔵に拘留され性的暴行を受けたのだった。犯人は逮捕されデイブは家に戻ったが、デイブはもちろん、この事件のトラウマを深く負った3人はもう元の幼なじみには、戻れなかった。
それから25年間、3人はそれぞれ別の人生を歩んだ。デイブ(ティム・ロビンス)は、あの25年前の事件のトラウマを払拭できずにいる苦悩する一児の父親として。ジミー(ショーン・ペン)は、犯罪を繰り返し、刑務所にも入っていたが、今は足を洗って小さなドラッグ・ストアの経営者として、最初の妻との間にできた娘ケイティを溺愛していた。ショーン(ケヴィン・ベーコン)は、州警察の刑事だが、妻とは別居している。3人とも今は、街でっても挨拶をかわす程度の仲だった。しかしある日、ジミーの娘ケイティが友人と遊びに出たまま戻らない事から3人の人生は、まるで川の分水嶺が、また一本の本流になるように合流する。刑事として、被害者の父親としてまた容疑者として。キャステイングがいい。三人の芸達者がそれぞれの役を熱演する。イーストウッドの演出は、エスタブリシュではない、プア・アメリカンの家庭の崩壊の進行と、青少年への性犯罪も増加する米国社会の苦悩と哀しみを、画面から滲みでるように描く。久し振りに本格的なドラマを観たという感慨と原作も読みたくなる映画だ。 (Tad)
参考文献:海外ミステリ通信2001年10月号
投稿者 bfc : 12:04
2005年07月06日
■シネマレビュー#01~マイ・レフト・フット
「マイ・レフト・フット」1989年アイルランド映画/監督ジム・シェリダン/主演ダニエル・デイ・ルイス、スブレンダ・フリッカー
「人間の持つ大きな可能性と生きる勇気を与えてくれる。アイルランドの著名な画家、作家、詩人であるクリスティ・ブラウンの半生を描く伝記映画」
アイルランンドのダブリンに生まれたクリスティ・ブラウンは、生まれながらにして重度の脳性小児麻痺だった。ある日、兄弟達が勉強している時、いつものように階段の下に寝そべっていたクリスティは、左足にチョークをはさみ、なにやら書き始めた。家族が見守る中、やっと書き上げた言葉は「MOTHER」だった。
これを見た父親は、やおらクリスティを肩に担ぎあげ、近所のパブに行き誇らしげに「クリスティ・ブラウン!俺の息子だ!」と言う。これから彼は、左足で絵を書き始め、左足によって社会とのコミュニケーションを確立していく。路地で左足だけで近所の仲間達とサッカーもやるし、恋にも悩み、兄弟達と石炭泥棒もやるし、パブで喧嘩もする、脳性小児麻痺の専門家との出逢いによる身体能力の回復と、良き理解者である看護婦との出逢いもあって人間的に大きく成長し、絵は画廊で個展をやるほどになり、詩や小説の才能も開花させて行く。ジム・シェリダン監督の冷徹な演出と的確なカメラワークが、たとえ、障害を持って生まれたとしても家族と地域社会の深い愛情と理解があれば、人間としての才能を大きく開花できるという事をヒシヒシと伝える。主演のダニエル・デイ・ルイスとブレンダ・フリッカーが好演。ともにアカデミー主演男優賞、アカデミー助演女優賞を受賞、子役などの脇役もいい。
(tad)
投稿者 bfc : 14:52