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2011年12月01日

ブックレビュー 徳永政二フォト句集1「カーブ」

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川柳家・徳永政二と写真家・藤田めぐみのコラボレーションによるフォト川柳句集。
さりげない日常の中の永遠を詠む川柳と、風景や情景の一瞬を切り取る写真が呼応して、誰もが体験する人生のカーブの先にある何かがが見えるような不思議な味わいと、佇まいのあるフォト句集だ。僕の好きなアーティスト、マイケル・フランクスの楽曲も聞こえてくるような気もする。一読をお勧めする、もしかすると、あなたのカーブする人生の先の何かが見えてくるかもしれない。このフォト句集は、5作まで発行予定があるそうだから楽しみだ。
(Tad)

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川柳:徳永政二・写真:藤田めぐみ
構成:倉本朝世
装幀:高橋善丸
発行:あざみエージェント
定価:本体1,200円+税
2011年10月25日第1刷発行

(オンラインショップ:http://azamiagent.com/)


徳永政二 とくながせいじ

1946年香川県生まれ 川柳家
1998年・1999年 川上三太郎賞  
2005年 大野風柳賞
2007年 川柳Z賞「風炎賞」
「川柳びわこ」編集人
京都朝日カルチャーセンター講師
滋賀文学会理事
滋賀県守山市在住


藤田めぐみ ふじためぐみ

1967年青森県生まれ 写真家
フォト句集『そんな気がしてた』『倒立前転』
(2009年 川柳・菊池京)
フォト句集『LONG SHOT』
(2010年 川柳・濱山哲也)
川柳ゼミ「青い実の会」会員
東京都在住
(http://megmego.com)

投稿者 bfc : 16:45

2006年04月03日

■ブックレビュー~『路上の弁護士』 ジョン・グリジャム

『路上の弁護士』 ジョン・グリジャム著 白石朗訳
  新潮社  本体2200円(税別) 1999年

舞台はワシントンDC。ある弁護士事務所に、ゴム長靴を履いた浮浪者が入り込み、九人の弁護士に銃を向けた。要求らしきことはしない。ただ、いくつかの質問をした。「飢えた人間やホームレスに出した金額は?」「寄付はいくらした?」そんなやり取りをしているうちに、SWATのメンバーが取り囲み、警察の狙撃者によって射殺された。その九人の弁護士の中にマイクル・ブロックはいた。彼は、有望な若き弁護士である。そんなある日、この事件は起こった。なぜこの法律事務所を選んだのか、何の目的でこんなことをしたのか。彼の謎解きが始まる。そして、射殺された男の代理人を以前に勤めたという弁護士、モーディカイと出会う。この出会いが、マイクル・ブロックの生き方を大きく変えることになる。

彼は、ホームレスの救護所で炊き出しをしながらその実情を目の当たりにし、偶然にも自分の所属していた事務所が関係する不当な立ち退き事件をあるファイルから知る。そして、それがゴム長靴男の事件の目的ではなかったかと考える。このファイルを持ち出したことで彼は警察から追われる身となった。将来を約束された法律事務所を辞め、年収は10分の1になるモーディカイの下で働くことを決意する。ギクシャクしていた妻との離婚も、このことで決着が付く結果となった。モーディカイの事務所には、生活の術を失った相談者たちが次々と訪れる。その中に、事件の真相を知る証人が現れ、謎は一枚一枚剥がれていく。弁護士である彼が、重要なファイルを盗んだ罪で裁かれる立場と大企業を相手取りホームレスのために訴訟を起こそうとする立場を同時に乗り切ろうとする。この場面は、重層的で実に面白い。更に、事件が縦糸なら、そこに絡んでくる一人ひとりの個性が生き生きと描かれている横糸がある。モーディカイは、マイクル・ブロックにロースクール時代に描いた弁護士としてやりたいことを思い出させる魅力的な弁護士。ゴム長靴の男は、自分の命に代えてホームレスの人たちの代弁者になろうとしたヴェトナム帰還兵。四人の小さな子供を抱え冬の寒空に追い出され、一家五人で命途絶えた若い母親のロンティー。薬物依存症を克服してわが子に会いたいと努力を続ける母親ルビー。ひとりひとりが一生懸命に生きようとしても塞がれる社会の壁があることを、この三人は教えてくれた。と同時に、この三人が愛すべき人だったと読者に思わせるのは、著者の人間表現の技法なのだろうか。愛すべき人たちに出合ったことで、若い弁護士は自分の進むべき道を見つけることができた。名門法律事務所のパートナーとしての名声や年収にも勝る彼自身の自己実現が「路上の弁護士」にはできるかもしれない。
中島美智代

投稿者 bfc : 11:16

2005年12月05日

■ブックレビュー#05~ヒューマン・ケアの思想と実践

『ヒューマン・ケアの思想と実践』 原 慶子著
ドメス出版 2000年6月20日発行 2300円

【「相手の背骨(価値観・見方・捉え方・精神軸)」を理解しようとするセンスが問われる福祉の仕事】

父親の代から続く老人福祉施設を受け継ぎ、その長年の経験から見た現在の社会福祉のあり方への洞察は、自分のように厚生労働省推奨のテキストから学び始めた者には見えない多くの問題を提示してくれる。一つの制度が生まれ根付いていくまでには、様々な検証や批判を受けなければならないだろう。本書には、その意味で多くのエキスを見出すことができた。

「ケア」については、福祉の仕事の善し悪しを決めるのは人間関係のあり方であると前提しながら、著者は「相手の背骨(価値観・見方・捉え方・精神軸)」を理解しようとするセンスが問われると言っている。「ケア」の意味は心配や気遣いなどが元々の意味であるが、それに必要なのは相手と自分の理解、さらに言うなら人間を理解するということだろう。しかし、行政の中で使われている「ケア」はどこかずれていると著者はいう。私もそう思う。もう一つの視点は、福祉の仕事に文化がどれ程盛り込まれているかという問題である。「文化と芸術の香りのするホーム造り」を目標としている著者の考えには大いに賛成である。もし、自分がサービスを受ける立場だったらと考えると、現在の福祉のありようはあまりにも寂寥としている。生活とは、その人の文化の具現化であるということもできるだろう。著者は施設の立場からの発言だが、在宅福祉でも同じことが言えると思う。後半では、法律や制度の作成される過程で、このようなケアの理念が軽んじられ枠組みだけが数字的にはじき出されている実態を、「人間の顔の見えない介護保険」と表現している。介護保険が国の財政対策として出発したこと、福祉施設のありようを制度の中に当てはめようという国に対して、実践を踏まえた意見は説得力がある。さらに、その痛烈な批判も今後の制度を変える原動力に変えようという著者の発想転換には脱帽した。厳密な洞察力と柔軟さとを併せ持った姿勢に本文中の過激な発言が気にならないほどの感動を覚えた。介護保険施行前に書かれた本であるため、すでに改善されている点もいくつか見受けられる。しかし、見方を変えると、このような現場からの声によって改善されたといえるかもしれない。制度に肉をつけ血を通わせるための材料が豊富に発見できた。また、ひとりの女性として、そのしなやかで力強い生き方にはとても魅力を感じる。
中島美智代

投稿者 bfc : 17:05

2005年07月14日

■ブックレビュー#04~バリアフリー社会の創造

『バリアフリー社会の創造』斎場三十四著 明石書店 1999年

 私自身、手話通訳として障害者団体の方々に同行して町の中を点検した経験がある。
本書に挙げられている事例のように、声高にバリアフリーを主張している設備や施設が、利用者にとって使いにくかったり、また、使えなかったりという場面を実際に目にした。人々の意識の中の障壁である。ソフト面のバリアフリーの遅れは、本書の例にもあるように、鍵のかかった障害者トイレやエレベーター、障害者用駐車場に置かれた一般人の車などを見ると、利用者にとって新たなバリアになっているといえるのではないだろうか。

ソフト面の遅れをハード面のバリアフリーが噴出させているようにも感じる。本来、意識の改革があってこそハード面のバリアフリーが生かされるというものである。公共施設や住宅のバリアフリーに、利用する当事者の意見が反映されていないことが、欧州諸国とわが国の大きな違いであることを、本書で読み取ることができる。それは、誰もが交通や移動をする権利「交通権」や皆と同じように生活する権利「生活権」といった権利意識が、わが国では薄いという背景がある、と著者は述べている。そのために、利用者のニーズとは違った、ちぐはぐな設備や施設が生じる結果をみる。障害のある人に障害のない人と同じ条件を作っていこうという、ノーマライゼーションを土台に始まったバリアフリーは、権利意識の改革が大きな課題であるとすれば、ソフト面の遅れをそのままにしておくことはできない。それを意識してだろうか、本書には福祉用語の解説が随所にあり、言葉の意味を確認しながら読み進むことができる。バリアフリーの企画、立案の段階から当事者の意見が反映されるシステムの構築が、必要ではないだろうか。利用者ならではのアイデアを聞くこともできるだろう。本書で紹介されている欧州のバリアフリーには、人間の動きや生活が感じ取れる。本書の末に「バリアフリー化とユニバーサル・デザイン化が深い関係を持ちながら、人に優しい社会に発展することが望まれる時代になっている。」とある。私は、十年ほど前に、欧州からユニバーサル・デザインの研究者を招いた講演会を手話通訳した経験がある。「デザイン」という言葉が、欧州では「計画・構想」といった広い意味で使われていて、スプーンの形をどうするといった「意匠」にとどまらないという話で始まったように、記憶している。利用者のニーズから発想するという視点が感じられた。そのような意味で、著者が述べているのではないと解釈した。本書は、街に進みだしたバリアフリーの点検から、大きな流れとしてのバリアフリー社会の方向性を考えさせてくれる。
中島美智代

投稿者 bfc : 09:54

2005年07月10日

■ブックレビュー#03~福祉を変える経営

「福祉を変える経営」 (ヤマト福祉財団理事長小倉昌男 著)
ある障害者が「私は、障害を持って生まれたことを不幸とは思わないが、日本の国に生まれたことを不幸だと思う」と言ったと伝えられているが、この言葉の意味するものには深いものがある。日本の国は障害者にとって住み難い国である。日本の行政官は、目的と手段を取り違えている事が多い。肝心の目的を忘れ、手段に過ぎない事柄に拘り目的が何処かに行ってしまっている事がままある。障害者問題にもそれがある。障害者に対する行政の姿勢にも首を傾けたくなることが多い。簡単に言えばいわゆる「箱もの行政」が横行している。予算を取って施設を作ることには熱心だがその施設を生かして何をするかという視点が忘れ去られている。

あえて言わせてもらえば行政の仕事のために福祉事業があるのであって、肝心の障害者の幸せが忘れられているのである。それが現状である。(本書まえがきより)この本はこの認識のもと著者が、全国主要都市で開催してきた障害者の賃金を現状より増やすために、障害者就労施設の施設長や職員を対象にした「経営パワーアップセミナー」のレジュメを本にしたものである。随所に自身の本業でも行政の壁と戦ってきた気概と自負が感じられる。国際連合が障害者の権利宣言をしたのは、1975年12月の第30回国連総会だ。その後1983年から92年までを「国連障害者の10年」とし、障害者の権利が健常者と同様の権利を獲得できるよう世界規模で様々な活動を行った。日本でもこの活動を受け1995年12月18日に厚生省(現厚生労働省)が障害者のための「ノーマライゼーション7か年戦略」を発表した。「ノーマライゼーション」とは障害のある人ももない人も同じように生活できる、権利も義務も同じように持って生活できるという事だ。けれども残念ながら日本ではいまだに「ノーマライゼーション」はかけ声だけで、ちっとも進んでいない。お役所任せでは、もうダメだ。障害者も自分で稼いで街にでようと、経営について、障害者の自立について解りやすく訴える。障害者はもちろん施設や行政の方々に、是非一読をお勧めしたい本だ。(Tad)
日経BP社刊 1,300円

投稿者 bfc : 10:53

2005年07月06日

■ブックレビュー#02~クワガタと少年

『クワガタと少年』 著者 大村あつし (本業はIT作家)
「気づきの物語」だと著者は話す。あるジャズの店にて、手渡された絵本。気軽にぱらぱらとページをめくっているうちに、手が止まった。もう一度始めからと、繰り返し読んででいるうちに、周りの音楽は耳に入らなくなった。日生活の中で使う、「言葉」、あまりにも不注意に使ってはいなかったか。ものの価値をどんな基準で決めていただろうか。そんな事を考えさせられ、ドキッとした。

 とあるデパートの昆虫売り場。熱心にクワガタを見ていた少年が、店員に問い掛ける。「ねえ、おじさん。クワガタの値段ってどうやって決めるの?」そこから物語は始まる。足の一本折れたクワガタをどうしても買いたいという少年に対して、店員は、「ちゃんとしたもの」、「普通のもの」との比較によって値段の差を説明しようとした。少年は、疑問を感じた。かっこいいツノを持ち、大きなクワガタが、なぜ足が一本折れているだけで3000円から300円にされるのか。
 あまりにも、私たちは市場的価値観でものを見過ぎてはいないだろうか。もっとさまざまな角度から見ることができたら、違った価値観をもつことができたら、自分と違う相手の立場を理解することができるようになれるかも知れない。年を重ねると、つい何もかも分ったような気になってしまうものである。小学生の少年が、大人に気づかせた「大切なもの」とは。
 福祉を考える授業で題材に使ってみてはどうだろう。算数で「通分」を勉強する年齢くらいから「大切なもの」を自分で発見できるだろう。ここに、著者の計算があるように思う。自分の身近に起きた「気づき」の現場を話し合えば、一歩深めることもできるだろう。教わるのではなく、自分で「気づく」ことが大切なのだ。その視点がこの本にはあると思う。著者はIT作家、中学時代の体験をもとに18歳で物語を書き上げ、今回、絵本として世に送り出した。静岡県浜松市では、教育委員会が小学校の副読本としたことから、地域の新聞社で取り上げられた一冊。子供たちの手の届く書店で、手に入らないのが残念。


『クワガタと少年』 著者 大村あつし (本業はIT作家)
発行所 株式会社クオレ 定価:本体1200円 (税込み)
    東京都渋谷区道玄坂1-21-6
    TEL 03-3464-3025(代表)

(中島 美智代

投稿者 bfc : 15:01

2005年07月05日

■ブックレビュー#01~介護に役立つ色彩活用術

介護に役立つ色彩活用術南涼子著 現代書林刊
「心と身体に働きかける色彩の持つ大きな力」
高齢化社会を迎えた日本では、「介護」は決して他人事ではない。自分の両親は勿論、自分自身もいつ介護される身になるともかぎらないのだ。こうした背景を踏まえて著者は「ユニバーサルカラー」という概念を提唱する。高齢者の視覚老齢化や弱視者のための色彩デザインにとどまらず、介護を必要とする高齢者、介護者、またはストレス過多の社会人を対象とする色彩心理を応用したメンタルケアを含めた色彩概念だ。具体的には老人ホームにおける色彩計画、サイン計画、スタッフのユニフォーム、色彩レクリエーションによるメンタルケア、パーソナルカラーによるファッションとメイクアップと、その応用範囲は驚く程広い。心と身体に働きかける色彩の持つ大きな力を再認識させてくれる。介護の現場にいる人を始め色彩に興味のある人には、是非読んで欲しい、解りやすい一冊だ。
(tad)

投稿者 bfc : 18:43